2019年10月6日(日)、令和初の『小児事例検討会』が開催されました。
今回の研修は「~子どもの行動から特性を分析し、主訴と問題点を整理しよう~」というテーマであり、今年6月に開催された小児事例検討会よりも一歩踏み込んだ内容が盛り込まれていました。
研修は昨年に引き続き、午前は講義、午後はグループワークでの事例検討という2部構成になっており、発達障害領域で勤務されている方以外にも、他領域で過去に小児領域の研修に参加したことがある方も対象としており、県内外から総勢19名の方が参加して頂きました。
午前は埼玉県立小児医療センターの寺尾智樹先生が、今回のテーマの「子どもの行動から特性を分析し、主訴と問題点を整理しよう」という内容についてご講義を頂きました。講義では、お子さんの客観的な行動(行動特性)からその共通する要素(認知特性)を抽出して、それを主訴と結び付けて考えていくまでのセラピストの思考のプロセスを、フローチャートで分かり易く解説していただき、若い参加者の方は講義にくぎ付けの様子でした。また発達領域では、誰がどのような困り感を抱えているのか焦点を絞りにくいケースもあり、そのような場合にどのように主訴を掘り下げていけばよいのかというお子さんの見方もレクチャーしていただきました。
午後は、南部地域療育センターの渡部綾香先生を招いてのグループワークでの事例検討でした。グループワークでは、渡部先生が実際にお会いしているケースの様子をVTRで3シーン見て、午前の講義で行った行動特性から認知特性を導き出し、主訴と関連させてフローチャートを作っていく作業を行いました。お子さんの客観的な行動特性を書いていく作業では身体機能や言語、注意面など様々な点に気づいて、模造紙には大量の付箋が張り出されました。それらの行動をカテゴリ化して認知特性を導き出し主訴とつなげていく作業では、みなさんご自身の意見を言ったり、また他者の意見を聞いてみたりと活発な話し合いがなされており、半日という研修時間では物足りない様子でした。
今回の研修では、作業療法士1~3年目という比較的臨床経験が少ない方の参加が多く、アンケートの中にも「考え方のプロセスや問題点の整理、主訴との結びつけ方の解説がとても丁寧で分かり易かった」「お子さんの評価をもっと具体的に色々な場面で行おうと考えさせられた」など若い方からのフレッシュな感想も多くいただきました。そしてベテラン臨床家の方からは「自分の経験から、思い込みや先入観を持ってお子さんを見てしまっていることに気づいた」といったご意見も頂き、ご自身の課題を改めて感じてもらえる良い研修になったのかと感じました。
症例検討でケースを出していただいた渡部先生からも「お子さんの背景に何があるのか、沢山のOTの方が様々な視点で考えて下さりとても参考になりました。今回の研修で得られた内容を日頃の療育にも生かしていきたいと思います。」とケースのお子さんを改めて考えいく良いきっかけになったとのご意見も頂きました。
11月には実際にお子さんとのセッションを行う「セラピスト養成講座」も開催され、この事例検討会で思考のプロセスを学ぶことで実際のアプローチに向けての良いステップアップに機会になったのではないでしょうか。
今後の研修も、現場で働く皆様が研修翌日から使えるような内容の研修を企画していこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
埼玉県作業療法士会 子ども支援委員会 佐々木竜也