去る、4月19日。草加八潮消防組合は、(株)ベルツ在宅リハビリテーションセンター草加のOT、市野昌平さんに感謝状を贈呈しました。
駅前で倒れ、心肺停止となっていた男性に対し、周囲の協力を得てBLSを実施。救急隊が到着するころには自発呼吸が戻り、無事蘇生に成功したことを受けての感謝状贈呈でした。救急隊からは、非常に適切な処置であったと感謝のコメントをいただいたとのことです。
市野さんは、職場からの勧めで埼玉県リハビリ三団体主催訪問リハビリテーション実務者研修会BASICコースを受講しており、そこで学んだBLSの技法が役に立ったとの事で、他にも利用者さんの急変に対応し救命した経験があるそうです。
病院、施設外で起こる急変に、果たして我々はどの程度適切に対応することができるでしょうか。生活を支えるOTは、いざというときに人命も救えなければなりません。とても難しいことですが、今回こうして、ひとりのOTが身をもってお手本を示してくれ、勇気と元気を与えてくれました。現場で働くOTの強さですね。ありがとう、市野さん!
(株)ベルツ在宅リハビリテーションセンター草加センター長のOT三瓶さんからのコメント、市野さんからの詳細な対応記録と感想をいただいたので以下に記します。
この度、弊社に勤めている作業療法士の市野が、帰宅途中の駅構内において、心肺停止した一般の方の救命措置を行い、無事救命に成功致しました。本人からその報告を受け、業務時間外にそのような場に居合わせたという偶然を驚くとともに、そのような緊急事態に臆することなく一医療人として適切な処置をとった市野の行動を大いに労いました。
弊社は訪問看護ステーションを主事業としており、25名いるリハビリ専門職には、埼玉県リハビリ三団体主催訪問リハビリテーション実務者研修会BASICコースを受講してもらい、一次救命処置のスキルを身につけてもらっております。そのような医療スキルがこのような形で社会のお役に立つことがあるとは考えてもおりませんでした。今回の市野の貴重な経験を社内で共有し、社内一同、一医療人としての心構えを再認識していきたいと思います。
(株式会社ベルツ 在宅リハビリテーションセンター草加 三瓶政行)
仕事が終わり、帰路の駅へ到着すると、男性が倒れており、人だかりができていました。
緊急事態と判断し、男性に近寄り様子を見ると、呼吸は死戦期呼吸の様で、頸動脈は触知することが困難でした。
心肺蘇生が必要と判断し心臓マッサージを開始しました。すると、人だかりの中の3名が「私も手伝います」と声をかけてきてくれました。
心臓マッサージを行いながら1人目に119番の依頼、2人目にAEDを持ってきてもらう様に依頼し、3人目には心臓マッサージの方法を見て頂きながら口頭指示にて伝達しました。
3人目の方と心臓マッサージを交代し、私はタイミングを合わせて人工呼吸を行いました。その際、ポケットマスクは所持しておらず、着用していたマスクを口に当てて実施しました。
BLSが開始されて、およそ3分程でAEDが到着しました。運んだ駅員がAEDを装着し、作動。「ショックの必要性はありません」とのことであり、心肺蘇生を再開しました。
心肺蘇生再開から間も無く、自発呼吸が確認でき、頸動脈の触知が可能となりました。
安楽姿勢をとらせる為に側臥位にすると、倒れた際に頭部を強打していた様で、頭部からの出血を認めました。駅員に依頼したタオルで後頭部を圧迫しつつ、脈と呼吸の確認を継続し、救急隊の到着を待ちました。
心肺蘇生開始から約6分後、救急隊が到着し、男性は救急車へと運ばれました。
その後、救急隊からの聴取を受けている間に、男性の意識が戻ったとの報告を受けました。
今回の心肺蘇生の手順や方法は救急隊の方からも適切であったという言葉を頂きました。
救急隊の方からの聴取が終わると、救急隊から連絡を受けた警察官からの聴取を受け、人命救助と報告が終了しました。
【感想】
急変された男性の方の意識が回復し、本当に良かったと思います。心停止を確認した際の焦りや、心臓マッサージを行なった際の肋骨が折れたであろう音、恐怖や不安は3週間程経過した今もしっかり覚えています。
恐怖や不安、焦りががある中で男性を救うことができた理由の一つに、昨年9月に開催された第8回埼玉県リハビリ三団体主催訪問リハビリテーション実務者研修BASICコース(※)にてBLSの研修を受けていたことがあります。
私が勤務している株式会社ベルツ在宅リハビリテーションセンター草加では会社の方針として本研修会への参加を積極的に行なっております。
また、訪問リハビリテーションを行う上で大切なフィジカルアセスメントや、状態悪化の予防、薬や栄養の知識、急変時対応など、職員による定期的な社内研修会を実施しています。
そして、昨年12月には私がBLSの社内研修会を実施していたこともあり、知識の復習が行えていたこと。以前、訪問時に利用者様が急変し、その際にもBLSにて運良く蘇生することができた経験があったこと。今までの経験と、急変に備えた心構えが、今回の人命救助に繋がったのではないかと思います。
最後に、忘れてならないことは、今回の人命救助に率先して手助けして頂いた3名の存在です。BLSの際中、とても心強かったことを覚えています。3名の勇気ある行動に心から感謝します。
今後も、急変時に自ら行動することができるよう、研鑽していきたいと思います。
※埼玉県リハビリ三団体主催訪問リハビリテーション実務者研修会BASICコースのBLS講習は、埼玉医科大学国際医療センター救急救命科 高平修二准教授のご指導のもと、受講者3名に1名のBLSコースインストラクターがついて行われています。日本救急医学会認定BLSコースです。
(株式会社ベルツ 在宅リハビリテーションセンター草加 作業療法士 市野昌平)
(編集 埼玉県作業療法士会会長 宇田英幸)
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