2019年06月28日『先駆者の実践に至るプロセスを知り、自ら切り開く力をつけよう』というテーマのもと今年度も地域包括ケアシステム研修会ナイトセミナーが開催されました。第1回は株式会社創心會代表取締役・作業療法士の二神雅一先生をお招きし“常識破りのすすめ「地域丸ごと作業療法」”というテーマでご講演頂きました。
二神先生は1996年に「創心會在宅ケアサービス」を設立し、介護保険制度が設立された2000年に「株式会社創心会」に組織を変更され、「本物のケア」を用いてこれまでに3万人の利用者へ自立支援を提供されており、現在では数々のグループ企業を設立されています。講義では、まさに地域ケアの先駆者である先生のこれまでの経験や挑戦していることについてとても分かりやすく、楽しく、熱心に伝えて下さいました。
その全てが非常に心に響く内容でしたが、その中でも印象に残ったのが、「本物のケア」という言葉でした。二神先生は目に見えている利用者のデマンズ(要望)にのみ対応しているケアは「本物のケア」ではなく、見えていない本当に必要な支援(真のニーズ)をアセスメントし、自立支援を行っていくことが重要であり、創心會では『日本一不親切な親切で。』を自立支援サービスコンセプトに掲げているとのことでした。利用者さんから「お茶入れて」と言われても「自分で出来るなら自分で入れてください」と言って怒られたこともあるそうです。まさに今求められている『自立支援』の非常に分かりやすいモデルケースであると思うと同時に『自立支援』という言葉が今ほど広がっていないころからこのような取り組みをされていたという凄さに感銘を受けました。
二神先生は昨年農林水産省6次産業化アワード奨励賞「農福連携賞」を受賞されており、受賞された農業×福祉×リハ社会参加モデルについてもお話しして頂けました。なぜ農業を選択したのか、どのようなプランでモデルを形成していったのかを失敗談も交えながら説明してくださいました。しかし、構想から何年も努力をされようやく事業化に成功したと思われた矢先に昨年平成30年7月豪雨により壊滅的な被害を受けてしまったということでした。「その時はやめようと思った」と先生も言われていましたが、全国からの寄付金や支援金を受けたこと、なにより仕事が無くなれば働いている障害者に給料が払えなくなるという思いでまた農地を回復させ、さらに別の場所に新たな農地を広げられたとのことです。壊滅的な被害を受けても「働いている人たちの仕事をなくさないために」と前に進んでいったというお話にはただ感動しました。
講演の最後には、地域支援を展開させていくには、支援者も当事者も地域の人も「できる」をもっと知る必要があり、出来ることを知り地域で包み込む発想、『地域丸ごと作業療法をする!』という感覚が必要だという大きなメッセージを伝えてくださいました。また、OTの地域への展開が進まない理由として、「OTの専門性を内側(自分たちの関心事)に向けすぎていないだろうか?」「患者・利用者の関心事はどこにあるのだろう?という視点が最重要ではないか」と「そもそも何のためなの専門性なのか?」ということ見直す必要があると話されていました。このお話を聞いて、改めて『OTとしての専門性』をどこに向けて、何のために発揮するべきなのかをもう一度見直してみようと思いました。
今年度のナイトセミナーのテーマである『先駆者の実践に至るプロセスを知り、自ら切り開く力をつけよう』という内容に相応しく、二神先生のこれまで実践されてきたことのプロセスの一部を知ることが出来る素晴らしい講演でした。
二神先生、ご多忙の中、貴重なご講演誠にありがとうございました。