『作業療法士』とは、まっこと不思議な職業だ。
まず、職業を問われて「作業療法士です。」と答えるときのしゃべりにくさ。「Gyou・Ryou・Hou」と続くところの発音が難しい。一度「詐欺横領士ですか?」と聞き返されたことがあるので、相手のユーモアに敬意を払いながら、ゆっくりと「作・業・療・法・士・です。」と答えておいた。
日本だけの職業かと問われた場合は、「No!」と言った後、「Occupational Therapist (オキュペイショナル セラピスト)」と答えるが、さらに滑舌は悪化する。英語も日本語も発音要注意の資格名称である。
次に苦労するのが、作業療法とは何をする職業なのかと問われたときである。協会の定義を持ち出すと、「身体または精神に障害のある者、またはそれが予測されるものに対してその主体的な活動の獲得をはかるため、諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・指導・援助を行うこと」とあるが、これが分かりづらい。
もし、これが「調理師」であれば、「胃または腸に空腹感のある者、またはそれが予測されるものに対してその主体的な活動のエネルギー獲得をはかるため、いろいろな食材を用いて料理を行なうこと」となるのかもしれないが、こっちの方が分かりやすい。
最近は、始めにこう説明することにしている。
「容易に養成校に入学でき、3年から4年頑張って勉強し国家試験に合格すれば待っているのが就職率100%。医療機関や施設に就職し、公務員も狙うことができる。バブリーなことはないが収入は安定しており、育児後の再就職も可能。適度な運動と一部デスクワークがあり、一生続けられる体にやさしい仕事。」
さらに追い打ちとして、「困っている人のために働いて、感謝され、報酬をもらえるのだから理想的な職業。」と付け加える。
ここまで言って興味を示さない場合は、素直にあきらめる。
興味を持って頂いて、作業療法は実際にどんな風に仕事をするのかと質問された場合は、真面目にこう答えることにしている。
「対象は、小さいお子さんからお年寄りまで幅が広い。仕事の内容も就職先によって大きく異なるので、いろいろな現場を見学してみることをお勧めする。用いる作業活動も種類が豊富で、園芸や手工芸のような趣味的な活動や、身の回りの動作や掃除・洗濯などの家事動作、あるいは徒手的な治療を行なう職場もある。養成校での3~4年は長いが、自分に合った仕事の内容と職場を探す期間と考えれば長くはない。何よりも専門職としてある程度自分の裁量に任せてもらえるので、やりがいが持てる仕事である。」