作業療法士を目指したきっかけ

最近では、人から「どうして作業療法士になったのですか?」と問われる機会が減ってきました。それだけ自分の年齢が上がってきて、研究活動を中心とした生活をしているからだろうと感じております。そこで、今回は初心に戻る気持ちを込めて、なぜ作業療法士を目指したのかを話したいと思います。

大学の体育学部を卒業後、療養型病床群を持つ老人病院に就職しました。介護の仕事の傍ら、体育教師になるための準備をしておりました。せっかく病院で働いているのだから、医療の専門職の資格を取らないか、と先輩や上司からの誘いで働きながら通える夜間の作業療法士養成校の受験をしました。

このとき、なぜ作業療法士になることを決めたのかというと、介護の仕事の経験が大きかったと思っています。介護は、患者さんの生活に密着した仕事であること、例えば食事介助や入浴介助、寝たきりの患者さんを車いすへ移乗させることなどの重労働もあります。このような仕事は、工夫しないと患者さんの生活の質を悪くすることがあります。また働く人の健康を害することもあります。つまり、科学的な裏付けを持って患者さんに関わることの必要性を介護の仕事から学びました。そのため、専門的な医学の知識と患者さんの生活活動(作業)の知識を学ぶことによって、生活を科学するという観点を持つことができるようになりたいと思いました。このような専門的知識を活かした患者さんへの関わりが作業療法であると思います。体育学部出身なので、理学療法士の方が良かったのではないか?と言われることもあります。しかし、最初に就職した病院では、患者さんの生活に関わる作業療法士が一番輝いて仕事をしているように見えました。

このような経験によって、高齢者を対象とした作業療法が非常に重要な仕事であることを知りました。