作業療法士が語る 作業療法

●雑感 昔々・・・

高校の先輩が府中リハビリテーション専門学校に進学したということを聞き、初めて「リハビリテーション」という言葉を知りました。「リハビリ」という言葉が一般的にもほとんど知られていなかった頃です。障害のある方と関わる仕事だということをおぼろげに聞いて興味を持ち、その事を父に話すと一冊の本を買ってきてくれました。故砂原茂一先生がお書きになった岩波新書の「リハビリテーション」という本でした。高校生の私にはその本を読んでリハビリテーションの全貌を理解することは出来ませんでしたが、理学療法と並んで書かれていた「作業療法」の内容に惹かれました。「人権回復思想と医学が結びついた第三の医学、リハビリテーション」「作業療法は障害を負った方を職業復帰させる仕事」「仕事に復帰し自立した生活を送ることで自尊心を取り戻す」、この最後の「自立した生活を送ることで自尊心を取り戻す」というところに、それまで自分が考えていた障害者福祉とは違う、新しさと魅力を感じました。実際の作業療法は職業復帰ばかりを目的としてはいないのですが、高校生の私は読解力もないので、そんな風に作業療法を認識して進学しました。実際に仕事に就いて、いろいろ間違った理解をしていたことがわかってきましたが、人が自尊心を持って生きることの価値に疑いの余地はありません。作業療法の目指すクライアントの自己実現が、自尊心を支えることに繋がるものであったら素晴らしいことだなと思います。

●雑感 これから・・・

作業療法の専門はICFでいうところの「活動制限」「参加制約」の改善で、クライアントのデマンドの理解と、的確なニーズの見立てがスタートラインです。このスタートラインまでの過程で、クライアントの意志を反映させることが大切なのですが、この部分での「うまくいっていない感」にずっとOTは悩んできたと思います。この不具合を解決するために「COPM」「作業科学」「ADOC」等、色々な手法とその実践が学会でもたくさん報告されていました。でもなんかまだビビッと来ない・・ので、もう少し勉強したいと思っています。同時に作業療法の治療効果が科学的に証明されていくことが必要ですが、この二つがあと20年で実現されて、自分の老後は作業療法をうけながら自宅で最後まで暮らせたらいいな、と思っています。